- 目の血管が詰まる「網膜静脈閉塞症」
- 網膜静脈閉塞症の初期症状・見え方
- 網膜静脈閉塞症で失明する可能性
- 網膜静脈閉塞症の原因
- 網膜静脈閉塞症の検査
- 網膜静脈閉塞症の治療
- 網膜静脈閉塞症はマッサージで治せる?
目の血管が詰まる
「網膜静脈閉塞症」
網膜はカメラのフィルムのような役割を果たし、多くの酸素を必要とするため、酸素を供給する血管が多数走っています。血管には、心臓から酸素を届ける動脈と、血液を流出させる静脈の2種類に分かれています。
網膜静脈閉塞症は、網膜の静脈が詰まることで血流が悪くなり、視力低下や視野の異常を引き起こす病気です。詰まる部位によって「網膜中心静脈閉塞症」と「網膜静脈分枝閉塞症」に分けられます。主に60歳以上の高齢者に多く、高血圧、糖尿病、高脂血症などがリスク要因です。また、遠視や緑内障のある方も発症リスクが高い傾向にあります。
網膜静脈閉塞症の
初期症状・見え方
初期症状
突然の視力低下
突然、片方の目の視力が低下することがあります。これは、網膜に流れる血液が滞り、酸素不足や浮腫が生じるためです。
視野の一部が暗くなる
視野の一部に暗い部分(暗点)が現れることがあります。これは、血管閉塞が網膜の一部に影響を与え、光を感じる細胞が正常に機能しなくなるためです。
歪んで見える
物が歪んで見える、または形が変わって見えることがあります。黄斑部(網膜の中心部)が影響を受けた場合に、このような症状が現れます。
見え方の特徴
もやがかかったように見える
視界が全体的にぼやけたり、もやがかかったように見えることがあります。
視野欠損
視野の一部が見えなくなる、または視野に「影」ができたように感じることがあります。閉塞の位置により、視野欠損の場所が異なります。
色がくすんで見える
見える色が通常よりもくすんで見えることがあります。
網膜静脈閉塞症で
失明する可能性
網膜静脈閉塞症は、閉塞の場所や範囲によっては失明のリスクがありますが、特に中心静脈が閉塞するとそのリスクが高くなります。また、黄斑浮腫や新生血管緑内障などの合併症が生じると、視力が大幅に低下し失明に至る可能性があります。しかし、早期発見と適切な治療により視力を保護することができるため、症状が現れた場合は迅速に眼科を受診することが重要です。
網膜静脈閉塞症の原因
下記の要因が組み合わさることで、網膜静脈が閉塞しやすくなり、網膜静脈閉塞症が発生する可能性が高まります。
動脈硬化
主な原因です。網膜静脈は網膜動脈と密接に関係しています。動脈硬化により動脈が硬くなると、隣接する静脈が圧迫されて閉塞が生じることがあります。
高血圧
高血圧は動脈硬化を促進し、網膜の血流に悪影響を及ぼすため、網膜静脈閉塞症のリスクを高めます。
糖尿病
糖尿病は血管の健康に悪影響を与え、網膜の血管も損傷しやすくなります。その結果、静脈閉塞が起こる可能性が高まります。
高脂血症
血液中のコレステロールや脂肪が高い状態が続くと、動脈硬化が進行し、静脈閉塞のリスクが増加します。
血液凝固異常
血液が通常よりも凝固しやすい状態(血栓症)は、網膜静脈に血栓ができやすくなり、閉塞を引き起こす可能性があります。
眼圧の異常
緑内障などによる眼圧の上昇が、網膜静脈に影響を与え、閉塞を引き起こすことがあります。
網膜静脈閉塞症の検査
視力検査
視力の低下の程度を確認します。
眼底検査(眼底鏡検査)
眼底鏡や細隙灯顕微鏡を用いて、眼底の血管や網膜の状態を直接観察します。網膜の出血、浮腫、血管の異常など、閉塞による特徴的な変化が確認されます。
光干渉断層計(OCT)
OCTを使って、網膜の断層画像を撮影し、黄斑浮腫や網膜の構造変化を詳細に確認します。これは網膜の浮腫や厚みを評価するために非常に有用です。
蛍光眼底造影
蛍光色素を静脈に注射し、その色素が網膜の血管を通過する様子を観察します。この検査では、血管の閉塞部位や新生血管の有無を確認できます。
視野検査
視野の広さや欠損を測定し、視野に影響が出ているかを確認します。これにより、閉塞の範囲や影響をより詳細に評価します。
網膜静脈閉塞症の治療
閉塞の部位や度合い、進行状況に応じて治療方法を選択します。当院では主に、以下の治療方法が行われます。
硝子体注射
抗VEGF薬を目に注射することで、血管からの血液成分の漏れ出しを防ぎ、網膜の浮腫を軽減します。VEGF(血管内皮増殖因子)は、浮腫や新生血管の成長を促進する物質で、抗VEGF薬はこの働きを食い止めて浮腫を改善し、新生血管の生成を抑制させるのに有効とされます。
レーザー治療
網膜全体(黄斑部以外)にレーザーを照射して凝固させることで、新生血管や浮腫を食い止める方法です。網膜を凝固させることで、網膜内に溜まった血液成分を吸収し、浮腫の改善を促します。
硝子体手術
他の治療方法を行っても症状が良くならない場合や、新生血管が破れて硝子体内に出血する「硝子体出血」が発生した場合には、硝子体手術が実施されます。
網膜硝子体手術は、白目に小さな穴を3か所程度開け、出血した硝子体を摘出する方法です。摘出後は灌流液(かんりゅうえき)という人工の液体に置き換えられるため、浮腫が抑えられます。
網膜静脈閉塞症は
マッサージで治せる?
網膜静脈閉塞症に対するマッサージの効果については、一般的に医学的に証明されていません。治療は通常、薬物治療やレーザー治療、硝子体手術などが選択されます。
マッサージが血流を改善するという一般的な考えがあるものの、網膜静脈閉塞症に特有の血流の問題には直接的な影響を与えるとは限りません。視力や網膜の状態に対しては、眼科医による適切な診断と治療が重要です。
マッサージを含む補完療法を考える場合でも、必ず主治医に相談し、専門的な治療を受けることを優先するのが良いでしょう。