加齢で網膜に膜ができる?
黄斑上膜
「黄斑上膜」とは、網膜の中心部である黄斑部に薄い膜が生じ、網膜の機能が障害される病気です。膜が縮むと皺ができます。
主な原因は加齢で、進行すると視力低下、視野のゆがみ、中心暗点などの症状が起こります。膜は硝子体手術で除去しない限り消失されませんが、進行する速度が遅く、失明に至ることはありません。
中高年に発症する傾向が強く、網膜剥離や網膜裂孔によって発症するケースもあります。黄斑前膜だけでなく、網膜前膜、黄斑上膜、網膜上膜とも呼ばれます。
黄斑上膜の症状
初期段階では症状が現れませんが、進行すると視力低下や視野のゆがみ、中心暗点(視野の中心部が暗くなる)、ぼやけて見えるなどの症状が現れ、見え方に違和感が生じます。
黄斑上膜の進行速度
黄斑上膜は通常、数か月~数年かけて徐々に進行し、視力低下や歪みが現れるという特徴を持っていますが、進行が非常に遅く長期間安定している場合もあります。症状に気付かないケースもあり、人間ドックなどを受けたのをきっかけに、偶然発見されるケースも少なくありません。
また、進行速度には個人差があり、膜が薄い初期段階では進行が遅いことが多いですが、膜が厚くなると進行が早まるようになります。進行が速い場合は手術が選択されるため、定期的に眼科で検査を受けることが重要とされます。
黄斑上膜で失明する可能性
黄斑上膜は視力の低下や歪みを引き起こしますが、失明に至ることは非常にまれです。一般的に進行が緩やかであり、適切な治療(たとえば硝子体手術)を受けることで、視力の回復や症状の進行を抑えることが可能です。しかし、治療しないまま放置すると、視力がさらに低下する可能性があります。
失明に至るケースは極めて稀ですが、症状が現れた場合は、早めに眼科医の診断と治療を受けることが重要です。
網膜の上に膜ができる原因
黄斑上膜の主な原因は、加齢に伴う硝子体の変性です。硝子体がゼリー状から液体化することで容量が減り、網膜から分離しようとします。この時、硝子体の一部が黄斑に残り、分厚くなると黄斑上膜を発症します。また、外傷やぶどう膜炎によって発症するケースもあります。
加齢以外の原因としては、網膜裂孔や網膜剥離の術後、ぶどう膜炎、外傷などが挙げられます。早い方では40歳頃から後部硝子体剥離が起こり、硝子体の一部が黄斑に残って膜を形成し、網膜上膜となることがあります。後部硝子体剥離は加齢による生理的な現象で、誰にでも起こり得るものです。
黄斑上膜の検査
視力検査
患者の視力を測定し、黄斑上膜による視力低下や歪みがあるかを確認します。
眼底検査(眼底鏡検査)
眼底鏡や細隙灯顕微鏡を用いて、直接眼底を観察します。これにより、黄斑上膜の有無や網膜の状態を視覚的に確認します。
光干渉断層計(OCT)
OCTは、非侵襲的に網膜の断層画像を撮影する検査方法です。黄斑上膜の厚みや位置、網膜の層構造の変化を詳細に観察できます。OCTは黄斑上膜の診断や進行度の評価に非常に有用です。
蛍光眼底造影
蛍光色素を静脈注射し、色素が眼底の血管を流れる様子を撮影します。黄斑上膜があると、色素の流れに異常が現れることがありますが、これは主に他の眼底疾患を排除するために行われます。
アムスラーチャート
網膜の中心視野に歪みがあるかを確認するための簡単な視力テストです。黄斑上膜があると、格子が歪んで見えることがあります。
黄斑上膜の治療
黄斑前膜は眼鏡や薬物療法では治療が難しく、現在のところ、有効な点眼薬や内服薬はありません。日常生活に大きな支障がない場合は、経過観察を行いますが、症状が強い場合は硝子体手術を行います。手術では、硝子体を吸引・切除し、黄斑前膜を摘出します。取り除きます。白内障がある場合は、同時に手術を行うことも可能です。