- 糖尿病性網膜症とは
- 糖尿病性網膜症初期~末期の症状
- 糖尿病性網膜症はなぜ発症する?
- 糖尿病性網膜症は片目だけ
発症することも - 糖尿病性網膜症の検査
- 糖尿病性網膜症の治療
- 糖尿病性網膜症は治るのか?
視力回復について
糖尿病性網膜症とは
糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症の1つで、網膜の毛細血管が詰まったり、血管壁に負担がかかったりすることで網膜が障害される病気です。初期には自覚症状がほとんど見られませんが、進行すると視界のかすみ、物が歪んで見える、飛蚊症などの症状が現れ、最悪の場合は失明に至ります。
糖尿病患者の約1/3が発症するとされ、病変の進行度により単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症に分けられます。
自覚症状が乏しいため、症状がないうちから定期的に検査を受けることが推奨されます。
糖尿病性網膜症
初期~末期の症状
糖尿病網膜症は、糖尿病が原因で網膜が障害を受け、視力が低下する病気です。網膜は光を受け取り、脳に伝達する役割を持ちます。糖尿病腎症、糖尿病神経症と並んで糖尿病の三大合併症とされ、定期的な検診と早期治療で進行を抑えることができますが、日本では中途失明の主要な原因となっています。症状は病気の進行とともに変化します。
また、糖尿病網膜症は、単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の段階を経て進行し、進行するほど糖尿病黄斑浮腫のリスクが高まります。初期や中期は無症状で進行することが多いため、糖尿病と診断されたら早めに眼科を受診することが重要です。
Step.1 初期:
単純糖尿病網膜症
糖尿病を発症してから5~10年後に単純網膜症が現れることがあります。網膜の血管で小さな出血や瘤ができたり、たんぱく質や脂肪が漏れ出て網膜にシミを作ったりすることがあります。これらの病変は、適切な血糖コントロールで改善できる可能性があります。
初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、検査で異常をチェックすることは可能です。
Step.2 中期:
前増殖糖尿病網膜症
単純網膜症から前増殖網膜症へ移行する期間は2~3年程度です。慢性的な高血糖により網膜の血管が詰まりやすくなり、血管が狭くなって血流が低下します。これにより、酸素や栄養を届けるために新生血管が作られますが、この血管は非常に弱く、すぐに破れてしまいます。
自覚症状としては視界のかすみなどがありますが、症状がないことも多く、受診せずにいるケースも少なくありません。
Step.3 末期:
増殖糖尿病網膜症
前増殖網膜症から増殖網膜症へ移行する期間はおよそ1~2年です。血流が低下して酸素や栄養が不足すると、新生血管が増殖します。新生血管は通常の血管よりも出血しやすく、その出血により網膜剥離や硝子体出血が生じます。
症状としては、視力低下、飛蚊症、赤い膜が見える、視界が暗くなるなどがあり、緑内障などを併発することもあります。特に、硝子体出血が起こると突然何も見えなくなることがあります。
糖尿病性網膜症は
なぜ発症する?
糖尿病網膜症は、糖尿病に伴って現れる病気です。糖尿病になると、血液中の糖分を細胞がスムーズに吸収できなくなり、血液中の糖分が多いままでいると、血管が障害されるようになります。特に、目の網膜にある細い血管は影響を受けやすく、詰まったり出血したりします。
既存の血管が上手く働かなくなると、栄養分を供給するために新生血管が作られますが、これらの血管は非常に脆く、出血や成分の漏れを引き起こします。この状態が視界のかすみや視力低下の原因となります。
さらに病気が進行すると、網膜剥離や緑内障などの病気を併発し、最悪の場合、失明に至ることもあります。
糖尿病性網膜症は片目だけ
発症することも
糖尿病性網膜症は通常、両目に発症する傾向がありますが、片目だけに症状が現れることもあります。糖尿病性網膜症は、糖尿病が原因で網膜の血管が損傷し、視力低下や失明を引き起こすことがある病気です。糖尿病による血糖値のコントロール不良が続くと、両目に同時に影響が及びやすいですが、片方の目が早く影響を受けたり、片方の目で症状が進行している間にもう一方の目が遅れて発症することもあります。
そのため、糖尿病患者は定期的に眼科での検査を受けることが重要です。糖尿病性網膜症は早期発見・早期治療が視力保護において非常に重要です。
糖尿病性網膜症の検査
眼底検査
瞳孔を通して、眼の奥にある網膜の血管や視神経を観察する検査です。当院では、無散瞳で眼底の隅々まで撮影できる最新の眼底カメラ(超広角走査レーザ検眼鏡 Optos 200Tx)を使用して定期検査を行っています。
異常が疑われる場合は、より詳しい検査のために散瞳薬を使用して瞳孔を拡大します。目薬の効果は4~5時間続き、その間は眩しく感じたり、視界がぼやけたりします。そのため、この検査を受ける日は、お車での来院は避けてください。
網膜断層検査(OCT)
眼底に赤外線を照射し、反射して戻ってきた波を調べて網膜の断面を撮影する検査です。この検査は、糖尿病黄斑浮腫の有無や経過を観察するために実施されます。検査時間は約10分で終わりますし、眩しさもほとんど感じません。
蛍光眼底撮影
網膜の血管異常を把握するための検査です。造影剤を静脈注射した後、約15分間眼底写真を撮影します。撮影中は青く強い光で撮影するため、眩しさを感じるかもしれません。この検査で血管の状態や虚血部位をチェックしてから、治療法を提案します。
超音波検査
超音波検査は、眼底全体の断面を観察するために行います。検査時間はおよそ10分です。硝子体出血や水晶体の混濁により眼底の観察が難しい時に実施され、網膜剥離の有無をチェックすることが可能です。痛みは伴いませんが、目の表面にジェルを塗るため、冷たく感じることがあります。
網膜電図検査
網膜の機能を調べるための検査です。点眼麻酔後に、電極が埋め込まれたコンタクトレンズを着けていただき、暗い部屋で15分間待機します。その後、光刺激に対する網膜の反応を記録します。この検査は、硝子体出血や水晶体の混濁により、眼底の観察が難しい場合に選択されます。
※必要な場合は提携病院にて行うことがあります。
糖尿病性網膜症の治療
糖尿病網膜症は進行すると完治が難しく、治療は症状の悪化を防ぐことを目的とします。
初期の場合
初期段階では、糖尿病の治療と同じように血糖(血液中の糖分量)をコントロールすることが重要です。血糖値を適切に管理することで、糖尿病および糖尿病網膜症の進行を防ぎます。初期の糖尿病網膜症であれば血糖コントロールにより、網膜にできた小さな病変をよくすることが可能です。
中期の場合
新生血管の発生を食い止めるために、レーザーで眼底を焼く「レーザー光凝固術」が実施されます。この治療では、網膜血管から漏れ出した血液成分によって腫れた部位や、黄斑部以外の網膜全体を凝固させます。
浮腫の改善や新生血管の消失によって、視力が向上するわけではありませんが、重症化や失明を防ぐためにおいても重要な治療とされています。
糖尿病性網膜症は治るのか?視力回復について
糖尿病網膜症は進行すると完治が難しく、治療は症状の悪化を防ぐことを目的とします。末期に入ると治療を行っても視機能が回復しない可能性が高いですが、初期段階から血糖コントロールを改善すれば、進行を最小限に抑えられます。
また、糖尿病網膜症は、腎症、神経症とともに糖尿病の三大合併症の1つであり、日本では成人の失明原因の第2位です。進行すると完全に治すことができないため、予防と早期発見が重要とされています。